技能実習生における『技能の移転』とは 行政書士葛飾江戸川総合法務事務所

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技能実習生における『技能の移転』とは 行政書士葛飾江戸川総合法務事務所

2023/12/27

2024年1月29日最終更新

技能実習生における『技能の移転』とは

お世話になっております。
行政書士葛飾江戸川総合法務事務所の糠信 一善(ぬかのぶ かずよし)と申します。
技能実習生における『技能の移転』とは
について紹介していきます。

技能実習生の技能の移転…?
聞いたこと、ないな…。

そうですね…。
技能実習生の技能の移転…、私も聞いたことありませんね…。

『技能の移転』とは…、日本で働いていた技能実習生が母国に帰国した後に、日本で学んだ技術を母国で活かしたり広めたりすることをいいます。
技能実習制度の目的自体が、人材育成を通じて開発途上国への技能の移転なんです。

技能実習制度の目的は、日本の労働力確保ではなく、開発途上国への技能等の移転

え…?
技能実習制度は、開発途上国への技能等の移転が目的なのですね…。
日本の労働力確保が目的ではない…んですね…。

ふむ…。
ということは…、技能実習制度の目的は…、やはり法的根拠があったりするのだろうか…?

仰る通りです。
以下に、平成二十八年法律第八十九号
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
通称『技能実習法』を載せますね。

(目的)第1条
この法律は、技能実習に関し、基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、技能実習計画の認定及び監理団体の許可の制度を設けること等により、出入国管理及び難民認定法(入管法)その他の出入国に関する法令及び労働基準法、労働安全衛生法その他の労働に関する法令と相まって、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の移転による国際協力を推進することを目的とする。

やっぱり、法的根拠はあるんですね~。

技能実習生の技能等の移転は努力義務

そうなんです。
技能実習法がその技能等の移転を目的としているために、技能実習生には技能等の移転が努力義務となっています。

で…、その努力義務も技能実習法に法的根拠がある…と。
そういうことだね…?

そういうことになります。
以下がその技能実習法に掲載されている法的根拠になります。

(技能実習生の責務)第6条
技能実習生は、技能実習に専念することにより、技能等の習得等をし、本国への技能等の移転に努めなければならない

なるほど…。
技能実習生は技能等の移転に努めなければならないのですね。
帰国後もうまく技能移転ができるといいですね。

技能等の移転が実際に行われているかの実態

そこだけど…、技能の移転等については理解できたけど、実際は帰国後に技能の移転等は行えているのだろうか…?

鋭い質問ですね。
実際はほとんど技能等の移転はできていません…
以下の記事はデジタル朝日新聞の令和5年4月16日の記事の抜粋になります。

えっと…、この記事を見ると…。
技能実習生の99%はアジアの国の方々で、応募の目的が母国で就職するよりも収入が高いから…ということですね。
技能実習生の応募の目的は技能等の移転ではないのですね…。

祖国への技能等の移転よりも自身への収入増加の方が目的か…、現実的には普通の感覚だよね…。

そうなんです。
技能実習の制度目的と、技能実習生の応募の目的が大きくかけ離れています…。
さらに、記事の続きですが、ここでは、技能等の移転ができている割合は全体の2~3%であると推定されている、ということです。

赤い線で目立つようにしていますが、技能実習生が母国に帰り、実際に技能に移転ができているのは、全体の2%~3%と言われている…。
帰国後の母国では、日本と同じ職種がなかったり、求人がなかったりすることが多いようです。
また、介護業ですと、アジアの国々はまだ日本のように高齢社会を迎えていないので、家族で高齢者の面倒を見ることから、介護業がそもそもない…、という状況です。

元技能実習生において技能等の移転が入国の妨げになる

そうか…。
技能等の移転を目的として、技能等の移転を努力義務にしているのに、実態は全くそのようになっていない…。
これは、何か問題があるのだろうか…?

問題…、というか、母国で就職先をうまく見つけられなかったり、日本での高収入を目的として、技能実習修了後に再度日本で働きたいと思ったときに、この技能実習法の制度目的と技能等の移転が入国の妨げになります…。

日本は法治国家です。
そのため、技能実習法第1条の目的や第6条の技能実習生の責務の条文を無視することはできず、入管もここを厳しく見て、判断しています。
当然ながら、法務省の外局にある、出入国在留管理庁…、通称入管自体が違法な入国を認めるわけにはいかないのです。

元技能実習生ということで、技能実習法に縛られてしまうのですね…。

元技能実習生が『特定技能』以外の在留資格(ビザ)でまた日本で働くためには…

元技能実習生が、『特定技能』の在留資格(ビザ)以外で、また日本に働きに来ることはできないのだろうか…?

技能実習法第6条は、
技能等の移転に努めなければならない
と、努力義務ですので、母国に帰国後に技能等の移転に努めたことを客観的に示せば、入管の審査は通ります

なるほど…。
具体的にはどのようなことを客観的に示せばよいのでしょうか…?

これを出せば必ず入管の審査が通るというわけではありませんが、参考にしてみてください。
・スマホやパソコンで母国の企業に応募したスクリーンショットをとる
・企業に提出する履歴書やエントリーシートの控えをとっておく
・応募や選考の結果、不採用の結果を残しておく

あと、それぞれに日付が分かるようにしておきたいですね。
技能実習後で、日本を出国した後の日付である必要があります。

技能実習法の技能等の移転がこんなに影響を与えるなんて…、考えもしなかった…。

そうですね…。
技能実習生は母国に帰った後、特定技能以外の在留資格(ビザ)…、例えば技術・人文知識・国際業務の在留資格(ビザ)で日本に働く可能性があるなら、技能等の移転に努めたことを示せるようにしないといけないのですね。

そうなんです…。
元技能実習生の皆様は、この技能実習法第6条の『技能等の移転』を軽く考えてはいけないことをお伝えしたく、このブログをアップしました。

・『技能等の移転』が考慮されていない入管への申請
・『技能等の移転』に努めた客観的な資料が示せない申請
は不許可になる可能性が極めて高い
ことはご留意ください。

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